脂漏性、つまり皮脂が過剰になる事で皮膚に炎症が発生し、慢性的な痒みなどの症状が発生する症状を脂漏性皮膚炎と呼びますが、この脂漏性皮膚炎は薄毛の症状とも関わりがあります。
脂漏性皮膚炎とAGA、薄毛の関係について詳しく解説いたします。
脂漏性皮膚炎とは
脂漏性皮膚炎は、何らかの原因によって皮脂の分泌が過剰となる事で生じる皮膚炎で、元々皮脂の分泌が多い頭皮や鼻の頭といった箇所で発生しやすい症状です。
皮脂は毛穴の内部にある皮脂腺という部分から分泌されるものですが、通常であれば皮脂は毛髪のコーティングや、常在菌の働きとも合わさって肌を弱酸性に保ち肌のバリア機能として働くなど、人体にとって保護に有用な働きを持つものであり、体に害となるものではありません。
しかし、過剰に分泌されてしまうと皮脂から作られる脂肪酸の量が多くなって肌への刺激となり、これが炎症を起こしてしまう事で脂漏性皮膚炎となります。
脂漏性皮膚炎はマラセチア菌が原因の一つ
脂漏性皮膚炎の直接原因としては、マラセチア菌という常在菌(カビの一種)の影響が強いとされています。マラセチア菌は皮脂をエサとする菌で、皮脂を脂肪酸に変える働きをもっています。
この脂肪酸は適量であれば皮膚を(雑菌などが繁殖しにくい)弱酸性に保つ事で有用となるのですが、量が過剰になると酸性が強くなり、炎症を引き起こします。
そのため普段はマラセチア菌は肌にとって有用な菌なのですが、皮脂の増殖によって増殖すると炎症の原因となってしまうのです。
脂漏性皮膚炎と薄毛
脂漏性皮膚炎は皮脂の分泌量が多い箇所で発生しやすく、皮脂腺は毛穴の内部に存在しています。
そのため、頭部は特に脂漏性皮膚炎になりやすい箇所で、何らかの理由で皮脂が過剰に分泌される状態になると真っ先に炎症をおこして痒みなどを生じやすい箇所といえます。
頭皮が脂漏性皮膚炎によって炎症をおこすと、毛穴周囲の細胞がダメージを受けるため頭髪が正常に育成されなくなり、抜け毛が増えるといった症状が引き起こされる可能性があります。
また、炎症そのものだけではなく強い痒みを抑えるために搔きむしったりしてしまう事で、頭皮の炎症が悪化して髪の毛の育成に悪影響となり、こういった影響によって薄毛の状態となる事があります。
ただし、男性ホルモンの影響などによって薄毛が進行するAGAとは異なり、頭皮の状態が悪化する事での薄毛ですので症状が治まれば薄毛も回復します。
過剰な心配は脂漏性皮膚炎の悪化にも繋がりますので、あまり心配しすぎずにまずは脂漏性皮膚炎をしっかりと治療する事が大切です。
脂漏性皮膚炎自体が悪化して頭皮環境が悪くなってしまうと、脂漏性皮膚炎の症状が治まってもなかなか毛髪が回復しなくなってしまう事もありますので、早期に治療を開始する事が大切です。
毛穴の汚れそのものが頭髪の育成を阻害するわけではない
脂漏性皮膚炎の炎症が進行すると頭髪の育成が阻害されますが、毛穴の汚れや皮脂そのものが薄毛の原因となるわけではありません。
少し前まで、頭皮の洗浄などによって毛穴の汚れを除去する事が頭髪の生育に重要であるといった事をうたうようなテレビコマーシャルなどもよく目にしましたが、頭皮が汚れているから薄毛になるとか、毛穴を洗浄すれば薄毛が解消されるという事はありませんので注意しましょう。
皮脂の過剰分泌となる原因
脂漏性皮膚炎は皮脂の過剰分泌による症状ですが、なぜ皮脂が過剰に分泌される事となるのかその原因は下記の通りです。
慢性的なストレス
ストレスは皮脂の分泌を促進させる要因です。
仕事などで強いストレスを受けると、体はそのストレスに抵抗できるように戦うためのホルモン分泌が盛んとなるのですが、このホルモンは皮脂の分泌を促進する働きを持っています。
慢性的にストレスを受け続けている方や、睡眠不足などでストレスの解消が適切に出来ていない方は皮脂の分泌が過剰となりやすいので注意しましょう。
脂や糖の多い食事
脂質や糖質の多い食事は皮脂の分泌を促進します。揚げ物など脂っこい食事は特に皮脂の分泌を促しますので、皮脂の分泌が多いと感じたら控えるようにしたほうが良いでしょう。
とはいえ、脂質や糖質を極端に排除するのも不健康な食生活となりますので、バランスよく健康的な食生活にする事が大切です。
間違えたヘアケア
皮脂は肌を乾燥から保護する役割も担うため、肌が乾燥すると皮脂の分泌が促進されます。
頭皮の皮脂汚れを気にして脱脂力の強いシャンプーを使用するなど、過剰な洗浄を行うと頭皮の保湿成分が減少して乾燥しやすくなりますので、結果的に皮脂の分泌が増える事に繋がります。
一方で、皮脂を残しすぎるのもやはりマラセチア菌の増殖に繋がってしまいますので、適度な洗浄を心がける事が大切です。
脂漏性皮膚炎は早めにクリニックでの診療を
その日のコンディションによって多少頭がかゆいといった程度であれば特に問題はありませんが、慢性的にかゆみが続いて掻きむしってしまう状態であれば脂漏性皮膚炎の症状が出ている可能性が高いので、早めに一度専門のクリニックで診察を受け、早期に治療をしてしまう事が大切です。
症状が悪化していくと回復にかかる時間も長くなってしまいますので、早めにしっかりと治療を開始して大きな問題にしない事が、結果的にもっとも少ない負担で治療を行う事につながります。
軽症であれば抗菌性能のあるシャンプーや、抗菌剤などの服用によってすぐに治療が行える症状ですので、まずは一度近くのクリニックで相談してみてはいかがでしょうか。
また、AGA外来を行っているクリニックであれば同時にAGAの症状の確認や対策も行えますので、併せて悩みを解消していく事も可能です。
城本クリニックではAGAのお悩みも医師がしっかりと診察して対応しておりますので、AGAや薄毛にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
監修
総院長
森上 和樹
1984/06:大阪市立大学医学部付属病院研修医
1986/04:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学専攻
1990/03:大阪市立大学大学院医学研究科外科系外科学修了
1990/04:田辺中央病院医長
1991/04:城本クリニック