薄毛にお悩みの方の中には、一か所だけ急激に毛髪が抜け落ちてしまう「円形脱毛症」が原因となっているケースがありますが、実は円形脱毛症はAGAとは全く異なる理由による症状で、対策なども違っています。

今回は円形脱毛症について、その原因や対策方法、治療方法について詳しく解説します。

円形脱毛症とは

円形脱毛症は、その言葉の通り円形に頭髪の一部が抜け落ちてしまう症状の事で、いわゆる「10円ハゲ」などとも呼ばれる状態の事を指します。

髪の毛が抜け落ちる大きさは症状の出方によって異なり、範囲が狭い事もあれば広めであったり、複数個所で同時に発生するという事もあります。

場合によっては頭髪の一部ではなく、脱毛症の範囲が拡大して全体が抜け落ちてしまう事もあるため、急激にAGAの症状が進行したものと考えてしまう事もあります。

円形脱毛症とAGAの違い

円形脱毛症とAGAの違いの一つとしては進行のスピードが挙げられます。

AGAはある程度長い期間の中で徐々に頭髪が薄くなっていく状態となりますが、円形脱毛症の場合は急激に抜け落ちる事が多く、前兆もないため突然一気に髪の毛の一部が無くなるというような状態となります。

この違いは円形脱毛症とAGAのそもそもの原因が異なるためで、AGAは男性ホルモンの影響によって髪の毛の成長期が短くなり、逆に休止期が長くなる事で徐々に薄毛が進行していきますが、円形脱毛症は自己免疫疾患などの影響で頭髪が抜けるため、気づいたら頭髪の一部が抜け落ちていたというケースも多くあります。

映画やドラマなどで時々「強いストレスによって一気に髪が抜ける」というような描写がありますが、円形脱毛症はこのタイプの症状だと想像すると分かりやすいかもしれません。

円形脱毛症は女性や子どもでも発症する

AGAは男性ホルモンの影響で引き起こされる症状のため、基本的には思春期以降の男性に限定される症状ですが、円形脱毛症は原因が異なるため女性や子どもでも発症する事があります。

むしろ円形脱毛症の症例の4分の1程度は子どもであり、若年層でも無関係に発症する症状という事がいえます。

円形脱毛症の特徴

円形脱毛症は下記のような特徴があります。

髪の毛が一気に抜け落ちる

前述の通り、髪の毛が徐々にではなく一気に抜け落ちていき、円形に地肌が露出するような状態となります。

痛みなどは無い

円形脱毛症の症状として、通常痛みは発生しません。事前の予兆など無く急激に抜け落ちていきます。

境界が明確

AGAによる薄毛では生えている箇所とそうでない箇所の境界がぼやけますが、円形脱毛症は髪の毛が生えている箇所と生えていない箇所が明確に分かれるため、境界が明確になります。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症の原因については、実はまだ完全に解明されているわけではありませんが、自己免疫疾患が最大の要因として考えられています。

人間の体には外界からの様々な刺激(ウイルスや細菌、毒物など)から身を守るために高度な自己免疫機能を保有しているのですが、この自己免疫機能が何らかの原因で誤作動を起こし、頭髪を「異物」として認識する事で排除してしまう事で円形脱毛症の症状になるとされています。

アトピーの人はなりやすい

自己免疫疾患が原因となっているため、同じく皮膚の自己免疫疾患(アレルギー症状)であるアトピーの素因をもっている方は、円形脱毛症も発症しやすいといわれています。

アトピーの素因というのはアトピー性皮膚炎だけではなく、喘息やアレルギー性鼻炎などの体質の方も含めます。

遺伝による影響も受ける

AGAによる薄毛は遺伝の影響を大きく受け、遺伝的に男性ホルモンの受容体が活発になりやすい方がAGAを発症しやすいのですが、円形脱毛症の場合も遺伝の影響を受けるとされています。

遺伝要素が直接的な要因ではありませんが、両親など近い親族に円形脱毛症が発症した事がある場合は、自身も発症する可能性が高めであるといえます。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症は単純に丸く脱毛が引き起こされるだけではなく、複数の丸い脱毛箇所が出来てしまうケースや、その症状の度合いによっていくつかの種類にわけられます。

単発型円形脱毛症

脱毛の箇所が1か所であまり広くない範囲で発症した場合を単発型円形脱毛症といいます。

脱毛は円形や楕円形で起こるのが特徴で、ほとんどの場合は発症後1年以内に治癒します。

円形脱毛症の中では最も軽症ですが、この後で紹介する他の症状に繋がってしまう場合もあります。

多発型円形脱毛症

脱毛箇所が1か所ではなく、複数個所で発生した場合は多発性円形脱毛症といいます。

複数の円形脱毛症がバラバラな箇所に出来る事もあれば、繋がって広い範囲での脱毛症状となるケースもあります。

単発型円形脱毛症から進行して多発型になる場合も多く、治っても再発してしまいやすくなる特徴があります。

全頭型円形脱毛症

頭髪が全て抜け落ちてしまう状態で、多発型の円形脱毛症から移行してこの状態になるケースが多いです。

放置しておいても自然と治癒したり改善するという事が難しいため、専門の医療機関で早めの治療を行うようにしましょう。

汎発型円形脱毛症

髪の毛だけではなく、全身の体毛が抜け落ちていく状態になると汎発型とよばれる状態になります。

眉毛やまつげといった毛も全て抜け落ちてしまう状態で、見た目の問題だけではなく健康を維持するための機能としても問題が生じる事となりますので、医療機関での治療が推奨されます。

円形脱毛症の治療方法について

円形脱毛症を医療機関で治療する場合には下記のような方法があります。

円形脱毛症についてはその多くが1年以内に自然と解消していきますが、症状が重症化すると治療の難易度もあがってしまいますので、なるべく早めに専門の医療機関を受診して治療を受けるようにする事をおススメします。

ステロイド薬による治療

ステロイドは免疫機能の働きを抑える作用を持つため、自己免疫疾患が原因となる円形脱毛症の治療として用いられます。

ステロイド製剤には外用薬と内服薬がありますが、軽度の場合は外用薬を中心とした治療を行い、進行している場合や早期に改善させる場合には内服薬も併用した治療などが行われます。

より強力な効果を期待する場合には患部への注射を行うケースもあります。

ステロイド薬は円形脱毛症の改善に効果を発揮しますが、一方で免疫機能を止めるという作用から副作用も大きく、長期間にわたる治療は推奨されません。投薬の際には治療効果を十分に得ながら、副作用を最小限に抑えるための方針について医師からの指導が行われますので、必ずその指示に従うようにしましょう。

局所免疫療法

頭皮を特殊な薬品で人為的に「かぶれ」させる事で発毛を促すという治療法です。

発毛のメカニズムは完全に解明されていませんが、免疫疾患によって毛母細胞(髪の毛を作る細胞)が攻撃されてしまっている状態から、人為的にかぶれを引き起こす事で免疫機能の働きを正常に戻す(かぶれを引き起こしている箇所の修復にむける)事で、毛髪の再生を促すという働きが期待できます。

ステロイド薬の使用による治療と同じく円形脱毛症の治療法として日本皮膚科学会の提唱するガイドラインに定められていますが、自費診療であるため高額になりやすい点に注意が必要です。

ミノキシジルなどの外用薬による治療

ミノキシジルはAGA治療でも利用される医薬品で、唯一「発毛効果」が認められているものです。

AGAの原因である男性ホルモンの働きを抑えるのではなく、髪の毛を作る毛母細胞の働きを促進するという方法で発毛を促進するため、円形脱毛症の改善にも効果が期待できます。

ミノキシジルが配合された商品はドラッグストアなどでも購入が可能ですが、医薬品として処方されるものとは濃度が異なり、また使用には副作用などもありますので専門の医療機関で診療を受けた上での使用を推奨いたします。

ストレスも円形脱毛症の原因として大きい

円形脱毛症の原因として、ストレスも大きい要素を占めています。

強いストレスは免疫機能の働きを乱す事から円形脱毛症を発生させやすくなりますので、予防のためにも過剰なストレスを防ぐこと、そしてストレスをため込まない事が大切です。

症状が出てくると抜け毛の存在が更なるストレスとなってしまう事もありますが、円形脱毛症はほとんどの場合で自然に治癒していきますので、過剰に心配せず心身を労わって過ごすようにしましょう。

塗り薬などによる比較的負担の少ない治療法もありますので、お悩みの方はまずは一度お近くの医療機関まで相談してみてはいかがでしょうか。