chemical formulation of mans hormone testosterone in graphical view. closeup shot

男性型薄毛であるAGAには、男性ホルモンの一つであるテストステロンが大きく関わっています。

それだけ聞くとテストステロンは悪影響なものと思ってしまいがちですが、テストステロンは他にも人体に有用な働きをもっており、正しい知識をもって付き合う事がとても大切です。

今回はテストステロンについて、詳しく解説します。

テストステロンとは?

テストステロンはいわゆる男性ホルモンと呼ばれるものの一種で、男性らしい体つきを作るために重要な役割をもつホルモンです。

例えば筋肉をつけやすくする働きがあり、テストステロンが活発に働いているとトレーニングなどで筋肉がつきやすくなるため、効率よく筋力アップする事ができます。女性よりも男性の方が筋肉がつきやすいのはこうした影響で、テストステロンが少なかったり働きが弱いと、なかなかトレーニングなどの効果が出にくくなります。

その他にも思春期における声変わりや皮脂の分泌促進など、男性特有の体質変化を引き起こす他、勃起する際に必要となるなど性行為に必要であったり、精神的にやる気を出したり前向きな考え方にさせるなどの作用もあるなど、生活していく上でとても重要な役割を持っています。

テストステロンは20代以降緩やかに減少する

テストステロンの分泌量は第二次成長期である10代から20代に急激に増加し、その後緩やかに減少していきます。

テストステロンが減少すると筋力などがつきにくくなるため、加齢によってトレーニングの効果を実感しにくくなったり、お腹周りが太りやすくなったりといった変化や、疲れやすくなる、性欲の減退、イライラしやすくなるなどの変化にもつながります。

テストステロンの減少による自律神経の乱れなどもあり、男性の更年期障害やLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と呼ばれる症状になる事もあります。

加齢によって減少するテストステロンですが、その減少の仕方には個人差が大きく80代など高齢になっても40代と同じような分泌量の方もいます。

テストステロンはストレスによっても減少する

テストステロンが減少する要因は加齢だけではなく、強いストレスも影響します。

人はストレスを感じるとそれに対抗するために高ストレスホルモンの「コルチゾール」が分泌されるのですが、強いストレスが続くとコルチゾールを作る副腎が疲弊してしまいます。

副腎はテストステロンの元である「DHEA」というホルモンも製造していますので、副腎が疲弊して働きが鈍くなるとテストステロンも作られにくくなってしまうのです。

テストステロンは生活習慣で増やせる

テストステロンは加齢やストレスで減少しますが、減っていくだけではなく分泌を促進する事も可能です。

一つは運動や筋力トレーニングで、テストステロンが増えると筋肉がつきやすくなるのと逆で、筋肉がつくとテストステロンも分泌されやすくなります。

筋肉をつけると考え方が前向きになりやすいと言われる事がありますが、これはテストステロンの働きなども影響しているのです。

また、食事ではカルニチンなどを接種するとテストステロンが作られやすくなりますので、カルニチンを多く含むラム肉などを食べるといった事も有用です。

男性ホルモン「テストステロン」とAGAの関係

テストステロンは男らしい体つきを作るために重要な役割を持ちますが、男性ホルモンが多い(強い)と薄毛になるというような話は誰でも耳にしたことはあるのではないでしょうか。

実はこれは間違いで、男性ホルモンであるテストステロンが活発であっても、必ずしも薄毛になるというわけではありません。

AGAは、テストステロンがジヒドロテストステロンというものに変化し、そしてジヒドロテストステロンが頭髪に対して影響を発揮する事で引き起こされるものですので、このどちらかを防げばテストステロンが多くてもAGAになる事はないのです。

ジヒドロテストステロンの作られ方

ジヒドロテストステロンは、テストステロンと5αリダクターゼという酵素が反応して作られるもので、AGAの直接的な原因となります。

5αリダクターゼは皮脂腺や毛乳頭で分泌される酵素で、側頭部や後頭部などではⅠ型、頭頂部や前頭部ではⅡ型とそれぞれ異なった種類が多く分泌されます。

5αリダクターゼはテストステロンの働きを補助するという意味があり、5αリダクターゼとテストステロンが反応して作られるジヒドロテストステロンは、分かりやすく言えばより強化されたテストステロンという事になります。

5αリダクターゼの分泌量は人によって異なり、この分泌量が多い人は体内で多くのジヒドロテストステロンが作られる事となります。

ジヒドロテストステロンは働く場所によって作用が異なる

ジヒドロテストステロンはAGAの直接的な原因なのですが、実はその働き方は部位によっても異なります。

ジヒドロテストステロンは頭頂部や前頭部といった頭髪に対しては髪の成長期を短くし、休止期を長くするため薄毛を進行させますが、一方で脇などの部位に対してはむしろ毛を濃くする働きがあります。

そのため、頭頂部は薄毛でも他の部分の体毛が濃いという方は沢山いるのです。

ジヒドロテストステロンが働きやすい体質とそうでない場合がある

ジヒドロテストステロンが毛髪に影響するためには、毛髪を作る細胞にある男性ホルモンレセプターという部分に接続される必要があります。

この男性ホルモンレセプターの数や活性度などは遺伝によって変わるもので、例えジヒドロテストステロンが多くても、レセプターの働きが弱いと影響が少ないため、AGAの症状などが出にくくなります。

5αリダクターゼの分泌量や男性ホルモンレセプターの活性度が高いとテストステロンが増える事より薄毛が進行しやすくなるといった可能性もありますが、そうでなければテストステロンを増やす事はメリットが大きいものですので、トレーニングをしたいけれど薄毛が進行しないか気になるというような方は、一度専門のクリニックでの検査などを受けて体質を確認してみると良いのではないでしょうか。

AGAの特徴と症状

AGAは男性型脱毛症ともよばれる薄毛の代表的な症状です。

症状としては髪の毛が薄くなるというものですが、もう少し詳しく、なぜAGAが進行すると髪が薄くなるのかを解説します。

ジヒドロテストステロンの影響により髪の成長期が短くなる

髪の毛は、毛母細胞が活発になって髪の毛が伸び続ける「成長期」と、髪の成長が止まって抜け毛となる「退行期」。そして次の成長期までの間である「休止期」という3つの段階が繰り返されています。

ジヒドロテストステロンの働きの一つがこの「成長期」を短縮するというもので、男性であれば通常3~5年程度この成長期が続いて髪が太く長く伸び続けるものを、数か月など非常に短い期間にしてしまいます。

成長期が短いという事はしっかりと伸びる髪の毛が少ないという事になりますので、全体のボリュームが減少していき薄毛の症状が進行していく事となります。

休止期が長くなる

また、ジヒドロテストステロンは髪の休止期を長くするという働きもあります。

休止期は通常であれば2~3か月程度とされますが、この期間が1年など長引いていく事で、髪の毛が生えていない毛穴の割合が多くなっていきます。

正常なヘアサイクルの場合は休止期にある毛穴が、全体の10~20%程度とされていますが、同時に休止期にある毛穴が30、40%と増えていく事で、生えている髪の毛の本数が大幅に減少しますので薄毛が進行していきます。

髪が細くなる

AGAの進行についてより正確に言えば、ジヒドロテストステロンが毛乳頭細胞にある男性ホルモンレセプターと結合すると放出される「TGF-β」という脱毛因子が影響しているのですが、このTGF-βは毛母細胞の分化を抑制するという作用もあるため、髪が太く成長しにくくなります。

全体の量が減った上で細くなるので、その組合せで一気に薄毛が進行してしまうのです。

髪の毛が細くしか伸びなくなるため、抜け毛も細い毛が目立つようになっていきます。

AGAで薄くなるのは頭頂部や前頭部

AGAの特徴として、髪の毛が薄くなる箇所は頭頂部や前頭部が中心で、側頭部や後頭部は薄くなりにくいという点があります。

これはジヒドロテストステロンの影響で薄くなりやすい箇所とそうでない箇所があるためで、それ以外の箇所が薄くなってきたり、急激に脱毛が進行しているような場合についてはAGAではなく他の症状の可能性も高くなります。

自分自身がAGAに該当するかどうかはセルフチェックでもある程度判別する事が出来ますので、気になるかたは一度チェックしてみてください。

まとめ

テストステロンは筋肉を作る際などに有用な役割があるホルモンである一方で、トレーニングなどによってテストステロンが増えると薄毛が進行するというような噂がされる事もありますが、これは間違いです。

テストステロンはAGAの間接的な原因ではありますが、その量が多いか少ないかだけで薄毛が進行するものではなく、その他の体質などが大きく影響するものです。

AGAの解消には正しい知識を持った上で正しくケアする事が大切です。お悩みの方はまず一度専門のクリニックなどで相談し、根本からAGAを解消してみてはいかがでしょうか。